家のこと(新築)
2022.5.09. MON
ヒートショック対策に重要な4つのこと!寒い家は家族の健康と幸せに悪影響を与える?
NEW
ヒートショックは交通事故死より多い!
日本人の死因の3割は「がん」ですが、その次に多いのが心疾患や脳血管疾患などの病気。
このような心疾患や脳血管疾患を引き起こす原因となるのは、意外と身近に起こりうる「ヒートショック」なんです。
ヒートショックとは、部屋と部屋の温度差により、急激な血圧変化がもたらされることで起こります。
血圧の急上昇・急低下は、心臓に大きな負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中などの病気も引き起こします。
実はこのヒートショックが原因で亡くなる人は、なんと交通事故で亡くなる人よりもはるかに多く、年間19000人と言われています。
つまりそれだけ私たちにとって身近なものなのです。
ところが、日本では交通事故防止のための規制は行われますが、ヒートショック対策は一切されていませんよね。
こんなに身近な死因であるからこそ、私たち自身がヒートショックに対する策を講じなければならないのです。
今回は、そんなヒートショックが起こるメカニズムを正しく理解し、予防策について解説していきます。
ヒートショックが起こるメカニズム
まずはヒートショックとは、どのような状況下で起こりやすいのか、そのメカニズムから見ていきましょう。
【ヒートショックが起こりやすい時期】
上記は、心疾患、脳血管疾患、溺死・溺水のそれぞれの月別死亡数を表したグラフです。
ご覧の通りどの死亡数も5~9月は少ないのですが、11~3月にかけては増加傾向にあります。
これから分かることは、寒い時期ほど死亡数が多いということですよね。
もちろん、このグラフで見る心疾患や脳血管疾患などの要因すべてがヒートショックであるとは言い切れません。
しかし、気温が低くなるということは、体を温めようとしますから、当然心臓に負担がかかりやすくなります。
寒い時期ほど、心疾患や脳血管疾患には注意した方が良さそうですね。
【ヒートショックが起こりやすい場所】
ヒートショックのように気温の変化による血圧の急上昇・急降下が起こりやすいのは、実や屋外ではなく室内。
およそ8割が家の中で起きているんです。
なぜ寒い屋外よりも室内の方が、ヒートショックが起こりやすいのかというと、それは薄着になるからです。
誰もが気温の低い日に外出する際は、コートやマフラー、手袋などをしますが、室内だと薄手のパジャマや部屋着で過ごすことも多いでしょう。
特にトイレや脱衣所、お風呂などは衣服を脱ぎますから、冷えを感じやすいのです。
さらに悪いことに、トイレやお風呂場というのは、家の北側に位置することが多いですから、日が当たらず一年中寒さを感じやすい場所とも言えるのです。
このような様々な要素が合わさり、ヒートショックは家の中で起こることが多いんですよ。
ちなみに、トイレやお風呂だけでなく、寝室もヒートショックが起こりやすい場所です。
寝室もトイレやお風呂場と同様に、家の北側に位置することが多く、薄着で過ごすことが多い場所。
特に気温の低い冬の朝など、暖かい布団から出たときとの温度差を感じてヒートショックを引き起こしてしまうことがあります。
日本の家は寒い!?ヒートショックが起こる危険は95%
これまでご紹介したように、ヒートショックというのは屋内で発生することがほとんど。
つまり、断熱性能が低い寒い家というのは、ヒートショックを起こしやすいのです。
実は日本の既存住宅のおよそ95%は「無断熱住宅」と言われています。
家が寒いから病気にかかるなんて考えもしなかった…という人もいるかもしれませんが、ヒートショックの問題を考えると決して軽んじてはいけないのです。
【日本と海外の住宅事情の違いとは】
日本の住宅環境は、「暑い」「寒い」「結露」「カビ」が当たり前のようなものとなっていますが、実は欧米諸国の場合、以下のように法律によって住宅環境の整備がしっかりされているのです。
具体的にどんな違いがあるのか、見ていきましょう。
◎アメリカの場合…全米50州のうち24州で断熱性が低いアルミサッシの使用が禁止されている
◎イギリスの場合…19℃以下は健康リスクが現れるとし、寒い家の危険性を明確に指摘。
理想は室温21℃以上に保つようにと室温規制を設けている
◎ドイツの場合…室温19℃以下では「基本的人権」が損なわれるとし、賃貸の場合は借主から一方的に契約解除ができたり賃料減額の請求ができたりする
【日本の住宅に室温規制がない理由】
これまでご紹介したとおり、日本では欧米諸国のように室温規制が特にされていませんが、それは一体なぜなのでしょうか。
それは日本特有の理由があるようです。
1つは、高度経済成長期を迎えたあたりに起こった深刻な「住宅不足」によるもの。
できるだけ早く多くの住宅を建てなければならなかったことから、「質より量」を優先して家を建ててきたからです。
そしてもう1つは、地震大国日本らしく、断熱性や気密性ではなく耐震性や防火性に重きをおくようになったから。
地震で家が倒壊し、家族の命を奪ってしまうリスクを回避するのはもちろんですが、ヒートショックによる健康被害に対しても、もっと知識を深めるべきかもしれません。
ヒートショックから家族を守るメリット
欧米諸国のように、日本も寒い家から暖かい家に住むことができれば、ヒートショックから家族を守ることができますよね。
しかし、断熱性気密性を高めるということは、それだけ費用もかかります。
お金をかけてリフォームしたり建て替えたりするメリットは本当にあるのでしょうか?
【メリット①手術や入院費などの金銭的負担を大幅に軽減できる】
もしヒートショックが原因で脳梗塞になった場合、手術費用や入院費用はいくらかかると思いますか?
一般的には、手術費用はおよそ257万円と言われており、そのうち自己負担は77万円、国の負担は180万円と言われています。
もちろんそれだけではありません。
脳血管疾患を引き起こした人のうち、後遺症が残る確率は60%と言われていますから、これまでのように元気に暮らすことができないケースもあるのです。
たとえば「要介護5」の認定を受けた場合は、以下のような金額がかかります。
◎介護サービス費用:最大36,000円/月(自己負担額)
◎往診費・その他医療費:12,000円/月
◎おむつや衣類の諸費用:10,000円/月
◎ショートステイ費用:30,000円(8日間利用した場合)
これだけ見ても、年間で88,000円の費用がかかるわけです。
一般的に、脳血管疾患後は平均7.5年生きると言われていますから、単純に計算しても88,000円×7.5年=792万円の金銭負担になるということ。
これに手術費用自己負担分77万円をプラスすると、なんと869万円もの費用がかかることになるのですから、できる限り脳梗塞などの病気にかからないことに越したことはないでしょう。
断熱気密改修をした方が、どう考えてもお得というわけですね。
【メリット②介護時期を遅らせることができる】
ヒートショックというのは、一般的に75歳以上の高齢者に多いと言われています。
高齢者になったときに、心疾患や脳疾患が引き起こされれば、たとえ命が助かったとしても、その後の生活に支障をきたすケースが考えられますよね。
だからこそ、ヒートショックから家族を守り、極力、ヒートショックが起こらないような住環境にすることが大切なんです。
左の図は、ヒートショックが起こりやすい場所である脱衣所の室温をたった2℃上昇した場合を表したものです。
緑のグラフ線を見て分かる通り、介護を必要とする期間4年先も延ばすことができます。
「たった4年!」と考えるのか、「4年も先に延ばせる」と考えるかは、皆さん次第ですが、介護費用や労力といった負担を考えれば、なるべく先延ばしにした方がいいはずですよ。
ヒートショック対策で重要な4つのこと
ヒートショックを防ぐ家づくりができれば、医療費の負担や精神的負担を大幅に減らすことができ、家族みんなが元気で長生きすることができますね。
では具体的に、どのような家づくりをしたらヒートショックを防ぐことができるのでしょうか。
ヒートショック対策で重要な4つのことをご紹介します。
【予防策①窓性能を高める】
まずは窓の性能を高めましょう。
窓は温度の出入りが一番多い場所だからです。
日本でよく使われているアルミサッシは熱伝導率が非常に良いため、外気温に左右されてしまいます。
一方、熱を通しにくい「樹脂窓」ならば、寒い冬も暑い夏も快適に過ごすことができるでしょう。
この樹脂窓は日本ではまだ普及率が低いですが、北欧北米など寒さが厳しい地域では当たり前のように使われています。
窓の高断熱化の費用は、リビング窓の場合15万円程度、寝室なら10万円程度の予算が必要です。
窓の断熱性気密性を高めるだけでも冬の快適さが大きく変わるので、家づくりの際はぜひ検討してください。
【予防策②床断熱の補強】
一般的な合板フローリングの床材と比べ、無垢材を使用したフローリングの方が断熱性が高いため冬でも裸足で歩くことができます。
床暖房を設置する費用はとても高額ですし、使用時には電気代もかかりますが、無垢フローリングなら電気を使わなくても一年中快適な温度が保たれます。
さらに調湿効果も抜群ですから、湿気の多い梅雨時期もサラッと快適に過ごせますよ。
足元が冷える・冷気が床を這うような家は、いつまで経っても暖房が効かず、電気代ばかりがかかってしまうので、無垢フローリングに変えるのがおすすめです。
【予防策③ユニットバス化する】
日本の古い住宅でよく見られる、床がタイルの「在来浴室」は、床がヒンヤリ冷たく、寒さを感じます。
さらにガラスのルーバー窓がある浴室であれば、気密断熱ともに非常に低いため、いくらお風呂に浸かってもなかなか全身まで温めることができません。
そのため、どんどん湯温を上げてしまい、お風呂から出た時との温度差が生じやすくなってしまいます。
ユニットバス工事をするにあたっては、80~120万円以上かかるので窓や床の断熱改修に比べると高額な費用がかかってしまいますが、家族の健康を守れるのであれば、安いものでしょう。
脱衣やお風呂場でのヒートショックは非常に多く、血圧の急激な変化によってフラついた拍子に転倒するケースもありますから、高齢者のみならず注意したい場所かもしれません。
【予防策④天井断熱の補強】
寒さ対策としてだけでなく暑さ対策としてもおすすめなのが天井断熱の補強です。
費用はおよそ20万円~。
これだけで暮らしやすさが変わりますから、床断熱・窓断熱と併せてぜひ検討してくださいね。
ヒートショック対策をした家づくりを
ヒートショックで健康を害する恐れというのは、今回ご紹介したように実はとても身近なことなんですよね。
暑い・寒いという家は、単なる不快さではなく、家族の健康や将来の生活にも影響を及ぼします。
壊れていないから、まだ使えるから…となかなか断熱改修に踏み出せない家庭も多いと思いますが、ヒートショックの恐ろしさを正しく理解し、暖かい家で快適に暮らすことを今一度考えてみてください。
私たち無添加計画でも、断熱性気密性を考えた家づくりを推奨しています。
断熱性気密性に富んだ家づくりは、今回ご紹介したようなヒートショックを予防するだけでなく、カビ・ダニを防ぐことにもなり、建物の劣化を防いでくれるメリットもあります。
せっかく家を建てるのであれば、家族みんながより快適で安心できる住まいを手に入れたいですよね。
断熱気密性の向上は、新築だけでなくリフォームでも行うことが可能です。
日々の暮らしを支える家をより心地よい空間にするために、私たちと一緒に考えていきましょう。
COLUMN
他の記事も見る